走ってばかり。
苛立ちとか、
なんかすべて
ものともせずに飛び越えて蹴散らして。
後ろなんか見ずにいられる。
だから、
走ってるんだ。



ブルー★スター
 gratefuldays 





「……。」
 躰が勝手に動いた。梧桐の両二の腕を掴んだのにそれ以上、どうしたらいいのか分から なかった。梧桐の筋肉を掴んだまま、引き寄せるでもなく引き離すでもなく。
 梧桐が浴びせたのは拳でも罵声でもなく、不器用なキスだった。キスが愛情表現だなん て思ったこともない。セックスよりも経験がない。じゃあ、これはなんだろう?
 唇を触れるだけのキスなんて、舌をねじ込むのよりも経験がない。まるではじめてのキ スみたいだ。
 梧桐の唇が離れる。多分一瞬だったのに、随分と長い間そうしてた気がした。こんな時 に梧桐がどんな顔をするのか興味があったのに、彼は顔を見せずに半屋の背中を抱く。
 キスをしてた時間、息を止めてる自分に気付く。その途端耳まで赤くなる。だけど引き 下がれないと思った。色気のある関係なんかありえない。それ以前の関係だって考えたこ ともない。
 梧桐の躰を引き離す。いつもと同じ種類の怒りと苛立ちが、それでもこの男を離そうと しない。半屋は衝撃で後ろへ倒れそうな梧桐のジャケットの襟を掴んで引き寄せる。
 惚けたような梧桐の半開きの唇に舌をねじ込ませる。
 アホか。
 自分と、梧桐に向けた言葉。いつだって優位に立ちたいと思ってる。コイツが誰のもの でも嫉妬なんかしない。其処にいればいい。此処にいればいい。
 暗号のように、過去に交わした言葉が流れていく。咬み合うことはひとつも思い出せな い。梧桐が手を伸ばして半屋のジャケットの襟を掴む。乱暴に脱がされる。半屋はキスを やめない。キスをやめたら現実に戻ってしまう。そんな気がしたから。
 梧桐の指が喉元の龍に触れる。半屋は梧桐のネクタイを解いた。まるでひび割れのよう。 乱れることなんか見たことない。侵入していくのは自分の手。罵る言葉なんかどこかに置 いてきた。多分あの階段に。
 手を伸ばす。触れるのは肌。自分と同じように温度を持つ梧桐の肌を、引き寄せてシャ ツの中に手を入れて背中を抱く。男の躰だ。少しも柔らかくなどなく、触れた場所から突 き放す。首筋にキス。梧桐が半屋の耳を噛む。


 止まらない。止められない。ビニールのシートに梧桐を組み敷く。
 仕掛けられた行為を見逃して歩けるほど器用じゃない。いつもと同じ。ただキスにかけ る時間が少し長いだけ。ただ、抱き合うのに求めているのとは違う。
 梧桐が半屋の腕に触れる。また、疵痕に。梧桐の躰にも消えない疵痕。大した感情も思 い浮かばずに半屋は舌を這わす。音を立てずにキスマークを残す。梧桐は腕を上げて赤い 痣を見た。そして笑う。いつもの梧桐の顔で。
「…っで!」
 半屋が呻く。梧桐が急に変な方向に引っ張るからソファから堕ちる。
 またかよ。
 抗議の言葉は声にならない。組み伏せられた。下手なキスで唇を開かせられる。ねじ込 んだ舌で前歯の裏をなぞられた。その手が胸の上にある。腰に触れる。
 熱い息は舌打ちで掻き消して。弱みなんか見せたくない。梧桐の内股に手を入れる。何 が快感か位分かり切ってる。
 半屋は唇を舐めた。


★★★



 梧桐はてきぱきと制服を身につけた。行為の残滓もそのままで。
 梧桐は何事もなかったような顔をする。だからと言うわけでもない。半屋も自然と何事 もなかったかのような顔をした。  だらだらと服を着て、シャツのボタンを閉めもせずに保健室の安っぽいソファにのさば って梧桐を見ていた。梧桐は一番上までシャツのボタンをしめ、きちんとネクタイを結ぶ。 梧桐がいつもの明稜帝の顔に戻ると、半屋も梧桐から眼を離した。
 制服のバックポケットから潰れたマイセン。ボックスじゃないとすぐに潰れるのは厭 だがボックスはボックスでかさばるから嫌いだ。よれた煙草を口に銜える。
「サル。」
 梧桐が呼びかける。もうでていこうとしているのに。半屋はだるそうに顔を上げる。
「此処は禁煙だ。」
 半屋は軽く息をついて片手を上げる。『うるせぇ』と『早く行け』と。背後で梧桐が戸 を閉めた軽い音がした。
 前を向いたまま、今度は少し長いため息。
   蛍光灯の明かりもない保健室はだるくて薄暗い。ヤッてる最中に誰かに見られたかも知 れないと、驚くほど冷静に考えてる。
 …どうでもいい。
 明日になったらもう忘れてる。乱暴なセックスの、この痛みもだるさも。
 喘ぎ声のひとつもなく終わった行為。互いしか見えてないのなら普段の殴り合いと変わ りない。梧桐には少し余裕がなかった。自分には梧桐より少し余裕があった。
 煙草に火を点ける。ジッポライターの開く深い音が変わらぬ日常を証明し、半屋 は火を吸い込む。眼を閉じればいつもと同じ匂いが肺を満たしていく。フィルター を銜えた唇が疼く。まだ欲望が躰の底に渦巻いている様な気がした。
 煙草を挟んだ左手、人差し指と中指。目の高さまで上げて、梧桐の肌に触れた掌を見る。 あの性格のような暑苦しい体温をしてた。
 半屋は煙草ではなく、中指の腹に舌を這わせる。


★★★


何考えてんだか知らない。
知りたくもない。
最後、
イクときに、
梧桐が噛んだ。


中指。


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んまー。一体なんざんしょ?
書きっぱなし梧半さん第二弾でごわす。
色気ゼロのセックスシーンを目指すつもりが単に具体的に書いてないだけ。
こういうのを俗に手抜きと申します。
(“逃げた”とも言うねー。)
★★★
苦情は受け付けません。アハ。

但し“私の考える梧半はこんなんと違う!”
“アンタの文章のこんなところが間違ってる!”というような
内容かつ理性的なご意見は拝聴したいものです。

メーる? --------------------------------------------
以前に書いたものを手直ししての再アップです。
手直ししてもこれが限界とは。(笑)


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