a little dragon couldn't fly.
_god bless you!/01.4




知らない町の、知らない部屋にずっといた。
側にいるはずの人が、その人の生きてきた場所を知って、近くなると思ったのに何故か 遠い。
訊かなければ解らない。
自分はここにはいられなかった過去の時間。


別々だったことに嫉妬を覚えてる。


掛け布団越しの胸の上に微かな重みを感じてみれば、半屋が上体を曲げて額を胸の上に 押しつけている。
嘉神はまた、目を閉じた。
身体は感覚鈍く、関節の痛みだけが浮き上がる。
ぼんやりと予感がして窓を開けると半屋がいた。
軽々しく部屋に上げたけれど風邪がうつらないか心配だ。


ずい分と我が侭になった。
素直に相手を求めるようになってる。
封印した過去とか、蝕むような後悔はもういらない。
胸の上の重みを失わないように。


大切にするだけじゃ足りない。


半屋は片頬を嘉神の胸に押しつけている。
目を閉じている彼の人の顔。
ずい分と、馬鹿げてる。



風邪がうつったとしか思えない。



ここからの風景を知りたいと思った。
今までなら有り得ないこの感情。
平然とすれ違う術を忘れてしまった。
ずい分と馬鹿げたことに巻き込まれてる。
嘉神が自分の名を呼ぶ。半屋の前では平然と落ち着いた顔をするくせに、風邪を引いた だけでずい分と無防備だった。
落ち込んだときとも違う、完璧にシラフじゃなかった。
嘉神の眉間には皺が寄っている。頭でも痛いんだろうか?
頭に来るから気使ってなどやらない。


病気なのはどっちだろう。
半屋は眉間に深い皺を刻む。
すこし自分らしさを取り戻さなきゃいけない。
やりたいようにやってたはずなのに掻き乱される日常がある。
梧桐よりもタチが悪い。自分がどこへ向かうのかわからないから。
いつの間にか嘉神はまた、寝息を立ててる。


たまには借りを作らせてもイイだろう。
軽い息を吐く。
また目を覚まして、あんな声で名前を呼ばれたら適わない。
自分以外の誰かに聞かれるのにも耐えられそうにない。


半屋は軽く舌打ちをした。
仕方がないから、次に彼が目を覚ますまでここにいることにする。
あくまでも、仕方がないんだと自分に言い訳して。

(c)copyright.K/Isafushi2002